格闘家 / 指導者 インタビュー
ボクシング【三迫ボクシングジム】女子プロボクサー 鈴木なな子(すずきななこ)さん
目次
今回のゲスト【三迫ボクシングジム】女子プロボクサー 鈴木なな子さん
1999年7月生まれ。東京都板橋区出身。
第5代日本女子ミニマム級王者鈴木なな子さん(三迫ボクシングジム所属)は4歳から空手を習い、高校生でボクシングへ転身。
2017年にプロデビュー。2018年には香港へ海外進出し、ライス・ウォン選手に4回T K O勝利して頭角を現わします。
順風満帆に見えるボクシング中心の学生時代ですが、その裏では怪我や勉強との両立など、多くの苦労を地道な努力で乗り越えてきました。
2021年2月9日、瀬川紗代を下して三迫ジム初となる女子日本王座を獲得し、学業も疎かにせず、2022年3月には立教大学コミュニティ福祉学部を卒業します。
そして、同年8月9日同級3位の一村更紗に勝利し、日本女子ミニマム級タイトルマッチで初防衛戦にも成功します。
今回は、新社会人として女子プロボクシング界を盛り上げ続け、
「どうせ取るなら世界を目指したい」
と話す、強い意志と覚悟を持った鈴木なな子さんにインタビューです。
――ボクシングを始めた「きっかけ」を教えてください
4歳で兄の通うフルコンタクト空手(新極真会)を習い始め、高1でボクシングを始めました。
最初は空手のパンチを鍛えるために補助でやっていたんです。
高2で空手の全関東大会女子軽量級優勝をしました。
でも当時、通っていた空手の道場も遠かったことや、大学受験の勉強もありボクシングに転身しました。
ワタナベボクシングジムへ入門して、半年後にプロテストを受けて高3の5月に後楽園ホールでデビューしてます。
――昨年、立教大学をご卒業されました。学業との両立はどのようにされていましたか?
ボクシングばかりに集中すると授業が間に合わなくなります。
香港に海外進出した時には、学校はテスト期間中で、いくつか単位を落とさなければいけなくて。
両親が学費を出して通わせてくれているので勉強も疎かにしたくなかったですね。
1、2年生は学校に通って忙しかったけど、3、4年生はコロナ禍でオンライン授業も多く、家で過ごす時間が増えました。
その分、ボクシングに集中できて精神的にも少し楽だったかもしれません。
大学在学中にワタナベボクシングジムから、学校に近い三迫ボクシングジムに移籍して学業と両立できる環境に変えました。
その都度、ボクシングを続けるためにどうしたら良いのか自分に合ったスタイルを見つけています。
――ボクシングの練習や試合結果がよくなかった時の克服法はありますか?
いつもと違う練習を取り入れて見たりとか..。
選手にはそれぞれ担当トレーナーがいますが、時には自分の担当トレーナー以外にもお世話になっている先輩にアドバイスを求めることもあります。
今まで気がつかなかった自分の弱点や次の課題を見つけることができますし、いつもと違う変化が大事だったりするかもしれません。
あとは海外の一流選手の試合動画を見て研究します。
海外の選手は発信力も違うし、選手の試合以外にも観客の盛り上がり方や演出も派手で日本とは大きく違うんですね。
ボクシングにかける興行が違うので、発見が多いです。
――ボクシングに向いている人・タイプはどんな人ですか?
すぐに結果を求めず、コツコツ同じことを続けられる人です。
基礎基本が忠実であることが格闘技では大事だと思います。
――ボクシングを辞めたいと思ったことはありますか?
今までに「もう辞めたい!」と本気で思ったことはないですし、今はいつ辞める時期かなど考えることはしていません。
でも学生の時は、授業が終わると周りのこはサークルに入っていたり、自由に遊んで過ごしている姿を見ると「いいなー」と思うことはありました。
ただ仲が良い友達は部活に入っているこも多かったので、私は私で頑張ることができてよかったです。
――女子プロボクサーの魅力とはなんでしょうか?
ボクシング自体が歴史のあるスポーツ。
その中で、女子がボクシングをやることはまだまだ未開拓な世界で選手の人数も少ないです。
例えばコスチュームで女子の良さを表現することもできるので、最近の私は試合の時にトランクスではなくスカートを履いて出場しました。
女子の試合は1ラウンド2分間と短い。
男子のようなスピードやインパクトは出なくても、華やかさは引き出せると思っています。
もうひとつ、リング上で試合をする時に、選手の性格が色濃く見える瞬間がボクシングの面白さだとも思います。
どんなことをしても勝とうとする人、すぐに諦めてしまう人、汚い技は仕掛けずに真っ当に勝負する人…もちろん逆の人もいます。
私は気が強いと言われることもあって、試合中は前にガンガン出ていくタイプみたいです。
普段見せない性格の一面が見られるのは格闘技の魅力のひとつですね!
――これからボクシングを始める人へメッセージをお願いします。
ボクシングは個人競技ですが、どんどん挑戦してみてほしいです。
女子ボクサーは少ないですが、だからこそチャンスがあります。
やってみるとボクシングのイメージ「痛い・こわい」だけでないそれ以上の良さがわかるんじゃないかと。
私自身は一番試合が緊張するし神経を使っています。
でもそのお陰で生活する上で起こる色々なことへのハードルが低くなりました。
何かあっても「試合に比べれば…」と乗り越えらえるので心の安定に繋がっています。
私は親になったら子どもにボクシングを進めるかと考えると…
好きになら続けて頑張ってほしいけど、好きでないなら無理やりはやらせたくないですね。
子どもの頃に、嫌がっても空手の道場に連れてこられている子を見ていたのでそういうことはしたくないです。
私は好きだったからここまでやってこられたので!
女子ボクシングは今もまだ発展途中ですが、少しでも興味を持ってもらえたらと思っています。
一人ひとり選手のファイトスタイル、背景が違うので一度は生の試合を観に来てもらえたら嬉しいです。
――お休みの日は何をされていますか?
毎週日曜日はオフにしています。
家でゆっくり過ごしたり、友達とごはんを食べに出かけます。
登山も好きで上高地や海外だとスイスにもいきました。
最近はカレーにハマって美味しい店を探して食べに行っています。
――好きな音楽やアーティストを教えてください。
私の入場曲にもなっている韓国の女性グループ、ブラックピンクです。
クイーンやマイケルジャクソンも好きです。
――好きな本や漫画を教えてください
漫画は「明日のジョー」「アオハライド」「おぼっちゃまくん」少女漫画からギャグ漫画まで読みます。
――好きなアスリート、尊敬している人はいますか?
今でも思い出すのは、淑徳巣鴨中学高等学校出身の島田慧巳さんです。
小学生の時に島田さんの空手の試合を見て「かっこいい」と憧れました。
私も中・高一貫校を受験をして空手部に入り、島田さんとは合同練習が同じでした。
一緒に練習をしたり、話す場面もあったんですよね。
当時島田さんは大学生だったと思いますが、強さだけでなく優しい方で尊敬していました。
私は可愛いものよりもかっこいいものに惹かれます。
――座右の銘、モットーはありますか?
「痛みなくして得るものなし」
大学の時は周りが遊んで楽しく過ごしている時間、私はジムでひたすら練習していたので…。
地道な努力を重ねて試合で勝ち、成果を得られています。
――今後の目標を教えてください
8月に日本女子ミニマム級王座を初防衛して、今は日本王座は返上しました。
着実に上に上がりたいから、次はまだ次戦は決まってないけど日本でタイトルを狙い、その後にWBOでアジア王座のベルトが欲しいです。
これからは世界を狙える立場になれるように闘っていきます。
ゆくゆくは世界へ出ていき、一番になりたいですね。世界王座で勝つことが一番価値あるものだと思います。
鈴木なな子さん、この度はお忙しい中ご協力いただき本当にありがとうございました!
おわりに
鈴木さんが所属されている三迫ボクシングジム は、練馬区東武東上線の東武練馬駅徒歩4分と、アクセス抜群の場所にあります。
現役プロキックボクサーだけでなく、運動不足解消やフィットネス目的で来られる方もたくさんいらっしゃるそうです。
お近くにお住まいの方、ぜひ足を運んでみてくださいね!
三迫ボクシングジム SNS
公式サイト:https://misakogym.jp
Facebook:https://www.facebook.com/
鈴木なな子さんSNS
Instagram:@ognana_s
<インタビュー&記事執筆:飯塚 まりな>
ライター・イラストレーター
インタビューを中心に活動中。
Web、フリーペーパー、書籍を執筆。
ほんわかしたイラストを描く。