格闘家 / 指導者 インタビュー
空手家【糸東会 朝霞市本部道場】井上 修(いのうえ しゅう)さん
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今回のゲスト【糸東会 朝霞市本部道場】井上 修(いのうえ しゅう)さん
1974年生まれ、新潟県出身の井上さんの空手道の原点は東洋大工学部空手道部でした。
ここで師範の岩田源三氏から空手四大流派の一つ『糸東流』を学び、空手の指導者として生きていく決意を固め、錬士師範六段を取得。
2004年には朝霞市、糸東会本部道場で指導者となり、技術本部、選手強化委員(糸東会ナショナルチームコーチ)にも就任。
今回はそんな空手道に生きる井上さんが指導されている貴重な稽古風景を覗かせていただき、インタビューを行いました。
ーー空手をはじめられたきっかけを教えてください
私が10代の頃はジャッキーチェンやブルースリーが流行った世代です。
強くなることへの憧れから、格闘技を始めたいと思っていました。
その後、高校で空手道部に入り、大学で上京して東洋大学へ通いました。
当時は空手以外に他の格闘技、キックボクシングも気になっていました。
でも、空手道部で大学の師範である糸東会の岩田源三先生にお会いし、その圧倒的な強さを目の当たりにします。
「本物に触れた」と思いました。
その後、部活を引退。
就職し、7年ほど空手からは遠ざかっていました。
そんな中、大学の合宿に参加したことを機に岩田先生から
「またやってみないか」
とお声をいただき、空手の世界へ戻ることになりました。
学生時代、一生懸命に空手と向き合っていたことが、岩田先生に伝わっていたと思うと嬉しかったですね。
ーー空手をはじめてよかったと思うことはありますか?
「心」です。
自分や周りを見ても、メンタルがすごく強い人ってなかなかいないと思います。
武道、格闘技を長く続ければ自然と身体も精神面も鍛えられます。
でも、どんなに強い選手でも怪我をすれば、一瞬で一般の人より弱くなってしまいます。
怪我をした時に、心も折れてしまうと、場合によっては立ち直れないかもしれません。
でも、特に心が強ければ、たとえ自分が怪我をして体が弱くなってしまっても、次の行動に移そうと立ち上がることができます。
私自身、「心」が強くなれたことが一番の収穫だと思っています。
ーー空手でうまくいかなかったとき、どんなふうに乗り越えられましたか?
試合で結果が出ない自分との葛藤を何度も経験しています。
目先の結果だけ追い求めると、次第に何をしていいかもわからなくなります。
そんな時は先ず「基本に戻る」ことを心がけます。
空手に必要な突き、蹴り、受け、移動、姿勢等。
基本的な部分でひとつひとつの動きを見直しました。
単純ですが、あらためて気がつけることがたくさんあります。
その結果、再び練習や試合に対して、前向きに打ち込むことができました。
ーー空手にはどんなタイプの方が向いていますか?
運動が得意で指導の理解も早いことは重要ですが、決して一番必要なことだとは思いません。
一番大事なことは指導者の意見を素直に聞ける事ではないでしょうか。
アドバイスを真摯に受け止める素直な気持ち。
そして目標に向かって全力でやり遂げる情熱が上達のコツです。
指導ひとつしただけで、一瞬にして目に見えて変わることがあります。
ーー空手をやめたいと思ったことはありますか?
一度や二度ではなく、たくさんあって(笑)
空手は人間の目で直接見て勝敗を判定する競技です。
当然、パーフェクトな判定は難しいです。
当時は自分の試合で、自分が思っている判定と違って負けたりすると悔しくてやめたくなりましたね。
今思えば逆のこともあったし、そうならないような試合の組み立てをすればよかったのですが。
当時の私にはまだそこまで考えることが出来ませんでしたね。
ーー指導者として気をつけていること、大切にしていることはありますか?
空手の指導が私の本業ですから、稽古は常に真剣勝負という心構えでやっています。
大勢の生徒を見ていますが、日々の変化や生徒にとって難しかった技ができた瞬間を見逃さないようにしています。
大体の人は、自分の技ができた瞬間に気がつかないことが多いです。
その都度気がつくことは本人に伝え、いかに生徒の意欲や気持ちを上げられるかが指導者として大切ですね。
知り合いの先生には生徒のモチベーションを上げるのが本当に上手な方もいるのですが、実は私はどちらかというと少し苦手かもしれません。
最近自分でもそれに気が付きました。
技術的な部分はもちろんですが、それ以上に精神的な部分でどうやって生徒を成長させればよいのかが最近の課題ですね。
ーー生徒さんと接して嬉しかったエピソードはありますか?
稽古にくる子どもたちから、ふとした時に「井上先生へ」と手紙をもらうことがあります。
とてもうれしいですね。
覚えたての字で一生懸命手紙を書いてきてくれたとわかります。
試合で優勝することや結果を残すことも喜びですが、小さなできごとが一番ホッとできるのかもしれません。
生徒の顔を見る日は毎回何かしら嬉しいことがあるように思います。
ーーこれから格闘技をはじめる人へメッセージをお願いいたします
格闘技と武道は少し違う部分もありますが、両方共常に自分と向き合うことが大切な競技です。
ストイックですが、強さだけが全てではありません。
最終的に大事なことは自分の成長に繋がることです。
お子さんが格闘技をはじめる場合は、がんばる姿を見てぜひ応援してほしいですね。
大会になれば全員優勝する事はできません。
勝つのはたった一人なんです。
ですから他人との比較ではなく、自己ベストを目指してもらえたらと思います。
ーーお休みの日の過ごしかたを教えてください
空手以外には…下手ですがゴルフです(笑)
YouTubeを見たり、夜はお酒を飲んで楽しみます。
ーー好きな音楽はございますか?
B’z、ミスチル、GLAY、ZARDは学生時代によくきいていたアーティストが好きです。
ーー好きな漫画はございますか?
漫画は好きで結構集めています。
カイジ、ハンターハンター、進撃の巨人など、最近の漫画も好きです。
本屋で面白そうな本があれば買って読んでいます。
ーー憧れのアスリートや尊敬する人を教えてください。
まず、私の師である岩田源三先生です。
物事に対して俯瞰的で、稽古の指導も理論的に教えていただきました。
また空手を本業にできるきっかけを与えていただき、今の自分の空手があるのは先生のおかげです。
もう一人、糸東会副会長であり大学の先輩でもある故 橋本岩樹先生にも多くの大切な事を教わりました。
世界大会にまで出場した先生は、空手の先生というだけでなく、企業経営者、座禅の師範をもされていて多方面で活躍されている方でした。
自分の思いに熱く、即座に行動に移し、最後まで情熱を持ってやり遂げる。
そんな先生のお姿には本当に沢山の事を学ばせていただきました。
ーー座右の銘やモットーを教えてください
「初心生涯」です。
糸東会を関東に広めた岩田万蔵先生のお言葉です。
残念ながらお会いしたことがないのですが、常に初心の心を忘れず、目の前のことに打ち込めと教えていただいているのかなと思います。
ーー最後に、空手を通して伝えたいことはございますか?
空手を続けて最近になってわかったことがあります。
格闘技は人間関係にも非常に役に立つと言う事です。
空手では戦うときには相手との間合いを計り、隙を狙って最良のタイミングで技を仕掛けます。
何も考えず単純に技を出すだけで相手には届きません。
最近は、この空手の駆け引きが、どんな場面でも同じだと思うようになりました。
どういうことかと言うと、仕事やプライベートでも会話の中に駆け引きがあったりしますよね。
先ほどの空手の話と一緒で自分のことだけを単純に主張するだけでは相手には届きません。
お互いのやり取りの中に
「この人は今何を伝えたいのか」
「何がしたいのか」
を感じ取ることがとても大事です。
場面によっては、相手の言葉には出てこない「思い」や、隙、弱さに気がつくことがあります。
そんな時、最良のタイミングで自分の思いを伝えることができれば、物事をより円滑に進めることができると気がつきました。
また、揉め事や争いに発展する前に手を打つことができるのではないでかと。
これも格闘技で培った長年の技術から得たものだとわかったんですよね。
「もっと若いときに知っていたら・・」
と、過去の恋愛などを振り返ると後悔が(笑)
ぜひ空手に興味がある方は糸東会でお会いしましょう!
私も空手の素晴らしさを一人でも多くの方に伝えていけるよう頑張ります!
井上修さん、この度はお忙しい中ご協力いただき本当にありがとうございました!
おわりに
井上 修さんが指導を行う 糸東会本部道場 は、東武東上線の朝霞台駅、北朝霞駅から徒歩約5分と、アクセス抜群の場所にあります。
稽古日は月・水・金曜日。
見学・体験は随時受け付けていますので、お近くにお住まいの「心」を強くしたい方、ぜひ足を運んでみてくださいね!
糸東会 本部道場
公式サイト:https://www.shitokaihonbudojo.com/
Instagram:@shitokai_honbu
Twitter : @shitokai_honbu
Facebook : https://www.facebook.com/shitokaihonbu/
YouTube:https://www.youtube.com/@WSKF-SHITOKAI
<インタビュー&記事執筆:飯塚 まりな>
ライター・イラストレーター
インタビューを中心に活動中。
Web、フリーペーパー、書籍を執筆。
ほんわかしたイラストを描く。